★冴川兄弟のドタバタ珍騒動 第一章 004

お兄たちと会ったのは私が家を出てから五分後くらいだった。何故かついてくるお兄たちを見つけて、不思議な気分になった。ついでに助かったとも思った。尚に頼むと言われていたのを思い出したのだ。だが口に出しては言わず、


「なんで着いてくるんだ?」

と、口にした。兄貴はお兄をみてため息を吐いていたが、お兄は顔の表情一つ変えず、「なんだかいやな予感がしてね」と遠くの方を見ていて今回もあまり良いことはなさそうだと思った。

まだ尚との待ち合わせ場所にはついていない。その場所は家をでて東にまっすぐだったので、目のいい兄貴が私を見つけて追いかけてきたのだろう。

そもそも、尚との待ち合わせ場所はかなり変わっていて、お兄はともかく兄貴が何かと愚痴っている。



「尚っていうやつは俺たちをいじめるのが好きなんだな」
「なんでそう決めてかかる。兄貴がそこまで言うのには驚いたぞ。何が気に入らないんだ?」

珍しい兄貴の愚痴に興味を持った。

「樹斗知らないのか?あそこはよくお化けがでるっていうぜ。お前そういうの嫌いだろう?」

よくよく親切な兄たちは、私の気なんか無視して話を続けた。

「そういえばそんな話もあったかな。随分前のことだったね」

とのんびり口調でお兄がいう。

「そうなんだけどよ。最近見たやつが多いんだ。きっと俺たちにその幽霊を紹介してくれるんだぜ」
「絶対にでるぜ」と蒼がまくしたてる。樹斗はげんなりとした面持ちでとぼとぼと歩く。

尚が私の嫌いなものをまずあげるならお化けとか、幽霊とかそのあたりだろう。そんなに嫌がらせをした覚えはないはずだったが・・・。

「私が驚くと思っているのか」

と強がってしまう樹斗だった。

「驚くだろうよ。キャーとはいわなくても硬直するぐらいはなるんじゃねえか」

兄貴が面白そうに目をキラキラさせているのは間違いないとして、お兄はというと

「まあ、尚ちゃんはそれが楽しくて僕たちを呼んでいるんだから。しかたないね」

・・・お兄の顔が引きつっている。めずらしい。何せ、尚はお兄をたちをとことんつけまわしては迷惑をかけているのだ。尚本人は、もしかしたら迷惑がられていることに気がついていないかもしれない。あくまでも「かも」だが。お兄にとってはやっぱり迷惑だったのだろう。

「それにしても悪趣味だな。何を考えてんだかよっト」

そう言いながら兄貴はそこらに落ちていた空き缶を蹴った。


   * * *


尚との待ち合わせ場所にその空き缶は消えていった。その場所は周りよりも暗かったがそこまでいやな場所ではなかった。ただ異様な雰囲気で、お兄は何かを警戒したようだったが、よく知っている声がしたら、いつもの優しそうなお兄の顔に戻った。

「こんばんわ。こんな遅くに誘って悪いと思ったけど、私この時間しか空いてなくて」

白々しいことこの上なしだな。と蒼は思った。

「別にかまわないですよ。それより」
「それより?」
「なぜこんな所に僕たちを呼んだりしたのかなって」

何故そんな事を聞くのだろうと奇妙に思った。兄たちには尚に誘うように言われたことをいっていないのだが・・・。だがそう思ったのもそんなに長い時間ではなかった。周りにちょっとした変化が見られたからだ。それは黒い服を着たじ10人くらいの人だかりだった。

「ちょっと樹斗を紹介して欲しいって言う人がいて、相談に乗っただけよ」

そういう尚も予定外だったらしく、声がふるえている。

「それがあいつらか?」

樹斗の言葉はいつもと代わらず淡々としたものだったが、それがいやに低い声だったので、尚をこの人物を本気で怒らせたことに気づいた。

「違うわよ!相談に乗ったのは一人だったもん」
「私は騙されるのが大嫌いだ。だが、このまま帰るのも嫌だから尚の家に行ってお茶をもらおうかな」

そういうと、尚の手を取って「あとはよろしく」とさっさとこの場を退場してしまった樹斗は、尚の家のほうに向かった。つまり樹斗はこの場を退場することに成功したのだ。




BACK                TOP                NEXT
 ホーム サイトマップ リンク