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★冴川兄弟のドタバタ珍騒動 第一章 005
問題なのは残されたほうであって、紅と蒼は互いに顔をみあわせてからこんな会話をした。
「やっぱりろくな事ねえじゃん」
「そうだね、もう少し危険性のないことを望んでたんだけど」
蒼は気づいた。紅はいたって平常だが瞳が紅くなってきている。紅に危険がせまると頭よりもまず全身で感じるらしい。
「あれ、俺あいつら知ってる」
「僕の知り合いもいるみたいだ。こんなとこに呼び出して何をするつもりだったんだか」
ここまでで二人の会話はストップした。黒い服を着た10人の人だかりが彼らを囲ったからだ。そのリーダーらしき人物が声をかけてきた。
「今日もまたさっさと帰ったと思ったら、こんなところで何してるんだ?」
随分と明るい調子でまるで仲の良い友達に話すようだったが、実際そういえなくもない相手かもしれない。やや痩せ気味の長身で、少し伸びた茶色の髪が方にかかっている。なかなかの美形で目を見張るものがある。そんなに悪いやつではなさそうなのだが、なんだか調子の狂う人だ。この場合、そんな事を考えていても仕方ないかもしれなかった。
「それはこっちのセリフだよ拓也」
紅の方は瞳が完璧に紅くなっている。蒼に言わせると何を言っても怒らせるだけだろうといったところか。
「つれないな。俺とはいつも夜を過ごす仲じゃないか」
「ふざけないでくれよ拓也。蒼に変な目でみられるだろう。ただの同僚だ。それで樹斗に何の用があったんだ?」
一瞬きょとんとした拓也は、はっはーんと今度は笑顔で応える。
「ふーん。尚ちゃんに話を聞いたのかな」
「誰かの相談にのったといっていたからちょっと考えていたんだ。この中に樹斗のことを知っているのは拓也だけだからね。暴力でくるなら、こっちも手加減する気はないよ」
にっこりと応えているが目は笑っていない。紅の顔がやけに冷たい印象を放つ。
拓也は「はぁ」とため息をついた。
「何か誤解してないか。もっと大人しい奴かと思ってたんだけどな」
「だったらこの周りにいる人たちは何なんだ。」
拓也は合図をしてみんなに下がってもらう。
「何か誤解しているようだが、俺は冴川樹斗に用があるんだ。大事な用なんだから邪魔しないでくれ」
「大事な用なら一人で会えばいいだろう。」
紅の様子にしかたがないと拓也が動く。
「それじゃ今回の目的が果たせないんでね。」
・・・ふと気づいてしまった。
不適な笑みを浮かべていた拓也の表情が驚きで瞳は大きく開かれあいた口がふさがらなくなる。
・・・紅の瞳が紅くなっていた。
「その瞳・・・。女の子だとばかり思っていたのだけれど・・・」
思考がつぶやきになってしまった拓也に紅が戸惑う。
「何のことだ?」
紅の一言はもっともだったが拓也は思考がしばらく固まってしまい即答できずにいる。
・・・今まで4年間同じ部屋にいたのに気づかなかった。ただ怒っているときもこの瞳にはならなかった。それに大学でケンカなんてしないしな。
「なるほど」と苦笑する拓也に紅はさらに戸惑う。
その隙を突いて紅から眼鏡をすばやく取ると、紅の首に手を当てて耳元でささやいてみせる。
「いや。もっと早くこうしていればよかったと思ってね・・・」
今までにない極上の笑顔で拓也がいう。紅は一瞬のことで驚いたが拓也を睨み返して言う。
「眼鏡返してくれないか。それがないとほとんど見えないんだ」
「知ってる。当分これはもらっとくよ」
意地悪に行ってくる拓也に紅は一瞬殴るところだったが、眼鏡をおとされたらたまらないので話しをもどすことにした。
「樹斗に何の用があるんだよ拓也」
「別に。それはもういいよ。それより・・・そんな他人を心配する余裕はどこにあるんだ」
言いながら紅の鳩尾にパンチを送る。拓也の腕にもたれかかった状態になった紅はそのまま気を失ってしまった。
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