★冴川兄弟のドタバタ珍騒動 第一章 006

青ざめたのは、紅本人ではなくて蒼だった。

「てめえ。わけわかんねえことばかり言って、いきなり何しやがる!紅兄に手を出すな!」

言うが早いか拓也を蹴りつけていた。

「何しやがるだって?それはこっちのセリフだ」

倒れた紅を抱えながら蒼に殴りかかる。こうなると後はただの乱闘になり、蒼の得意とする分野で拓也は戦わないといけなかった。

まず黒い服を着た連中だが、やはりそこら辺から集めたちんぴらといった感じのものたちばかりで、蒼の相手にはならなかった。蒼はしょっちゅうケンカをしているため、大体相手の力量が分かるようになっていた。つまりそれだけ強く、ましてちんぴらとはよくけんかをしているから顔見知りの奴もそう少なくはない。

「よう。またあったな。今回は遠慮しないでいかせてもらうぜ」


これは悪魔のささやきよりもたちの悪い言葉だったかもしれない。重圧感のある声で危ない危険な目がちらつく。黒い服を着た中の一人がおびえたようにつぶやく。

「まさか刻の森高校のあの危険な野郎か」
「危険な野郎とはなんだ」

そういうとまず手前に立っていた男を軽々となげ、その後ろにいた男におもいきりぶつける。そうしたと思ったら、その投げた奴らを踏み越えて三人目の顔に向かって、足をそろえる。そのまま足は顔面に直撃して着地を済ませると四人目の足を払い、飛び掛ってくる五人目の男の顔を持つと四人目の男の顔に容赦なくぶつけた。

ここまでくると立ち尽くして呆然とその光景をながめている奴らが残った。それもそうである。これだけのことをするのにかけた時間は、約5秒という短い時間だったのだから。それも、やられたほうは気を失ってしまっている。

「まったく。手を出すつもりはなかったのに。紅の弟君か。困ったもんだ。」

拓也の声が少し聞き取りにくくかんじた。周りの黒い服を着た連中は逃げ出してしまっている。
拓也は殴りかかった。蒼は顔の前に奇妙な光が走るのを見た。
蒼は拓也の腕にはめているものをすぐに見つけた。ナックルだ。

「拓也とかいったっけ。そんなもん着けて紅兄の鳩尾にいれたのか」

言いながらナックルをつけた手を押さえる。

「そんな器用なことできる分けないだろう。紅の鳩尾にいれたのは右。着けてるのは左だ」

拓也は静かにそう答えると、右から顔面に向けて鋭く蹴りつけようとする。だが蒼はそれを少し後ろに状態を寄せてかわす。反撃はきついものだった。蹴りつけようとしていたところに蒼の蹴りがまともにあたる。

「くっ!」

立っていられなくなって、思わず崩れた拓也に向かって言う。

「あんた、紅兄に手加減したの?」
「悪いか?」
「ふーん・・・」

そこで少し間があったが、蒼が紅を起こしに行った。周りにはもう拓也しかいない。



「完璧に参ってるなこりゃ。どうしてくれんだよ。こんな大男、俺一人で運べっての?そりゃひでえんじゃねえ」

たたいても起きない紅に向かって愚痴を言う。それだけくらったのか、それとも疲れがたまっててくらったのをいいことに寝てるのか判断がつかないところだ。どっちにしろ運ばないといけないから・・・・・・。

「紅は軽いよ」
「知った風にぬかして、あんたがやったんだろう」

なんだ怒ってんのかな。などと軽く考えて、拓也はこれからどうしようか考えた。
・・・紅い瞳をもっているのは冴川樹斗だと思っていたがどうやら4年間一緒に過ごした紅だったようだ。
・・・女の子だと思ってたのにな・・・本当に残念だ。今頃かわいく育ってると思っていたのに・・・。



そんな拓也はもう眼中にないらしく、紅を背負ってさっさと歩きだしてしまった蒼を見て、拓也はおもむろに言った。

「なあ。蒼君。僕も連れてってくれないか」

蒼の足が止まる。

「何考えてんだあんた」
「いや。今回のことは悪いことをしたが・・・もうこれ以上そちらに危害を加えるつもりはないよ。背負っていくなら大学寮につれてくのは俺の仕事かと思って。」

何をいいだすんだこいつ。と内心で考えるよりも顔に出てしまったらしく、拓也に突っ込まれる。

「何言ってんだって思っただろう」
「ふん・・・紅は俺が運ぶ。・・・それより、あんたよく動けたな。俺のくらってそんなに動けた奴はめずらしいぜ」
「それはすごいな」

特に感心したようでもなく紅の方を見る。

「ずいぶんとかわいらしい寝顔だことで。」

そういうとおでこにでこピンする。紅は何か口を動かしたようだったが声は聞こえてこなかった。

「紅兄にちょっかい出すと後が怖いぜ。何しろ、樹斗のお兄好きは天下一品だからな」

そんなに悪いやつではなさそうだと蒼は拓也と普通に接する。

「なんだかそれだとその樹斗ちゃんに殺されそうだね」
「あんがいありえるかもよ」

拓也は蒼の顔を見たが、それがマジなので冷や汗が出る思いだった。

「それは・・・紅にたのむしかないかな」

思いっきりため息を吐いて紅を見ると後は蒼について歩いていった。







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