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★冴川兄弟のドタバタ珍騒動 第一章 008
樹に囲まれた喫茶店「トメリカ」は泥棒が入りやすい。樹をつたって二回の窓から入ってこれるからだ。蒼は軽々と樹を登ると二階の窓を開けてさっさと部屋に入ってしまった。音を立てずに静かにしていると三階のほうから樹斗と尚の声が聞こえてきた。
「やっぱりここの紅茶はおいしいな」
「ありがとう。でも言っとくけど、騙されたのは私だって同じなんだからお互い様よ。向こうが上手だったのよ。ねえ。次は私たちが仕返ししない?」
「何かいいアイデアはないかな」とうれしそうに話してくる尚をよそ目にゆっくりと紅茶を飲んでいる樹斗は、なんとなく嫌な予感と寒気がした。
「尚・・・何か・・・・・・」
言ってる間に扉が開け放たれ、蒼が飛び込んで樹斗に殴りかかる。
反射的に拳を押さえた樹斗は殴ってきた相手が誰だか気づいた。
「あ・・・兄貴!?」
殴りかかってきた蒼に足を引っ掛けて寝かせると、その上にのって押さえ込む。暴れる蒼に肘鉄を食らわせると、髪に何か大きな白いものがついているのに気がついた。
「きゃー。なんなの!?」
「兄貴?・・・・・・」
尚がパニックを起こしている。気を失った蒼の様子を見る為に額に手を当てた樹斗は、何か白い霧のようなものが出ていることに気づいた。その霧がそのまま樹斗にからみつき、きつく絡み付いてくる。だがその様子は尚には見えていない。
「樹斗。・・・これって噂なんだけど、幽霊見たって言う人は霧に包まれてしばらく何があったのか思い出せないんだって・・・蒼さんもそうなのかな?」
キョロキョロト落ち着かないしぐさで神妙に言う尚に、樹斗は声をしぼりだした。
「尚・・・逃げ・・・」
白い霧に包まれた樹斗の声が途絶えた。
霧が消える頃には尚と蒼が残されて、樹斗の姿はなかった。
* * *
「樹斗?・・・どこに行ったの?」
空しく尚の声が響いた。このままでは何が何だか分からない。
寝ている蒼を無理やり起こそうとする。
「蒼さん!樹斗が消えたのに何寝てるんですか!」
寝かせたのは樹斗なのだが、そんなことを気にしている場合ではない。
蒼は「うぅ・・・」と頭を抑えながらゆっくりと起きた。
「・・・ここは?」
・・・確か家をでて外をを歩いていたはずだが・・・と思っていると尚がもう攻撃を仕掛けてきた。
「樹斗よ。樹斗が消えちゃったのよ!」
刻の森高校のあの冴川蒼の胸倉をつかんで騒ぎ始める。これには蒼もたじろくしかない・・・が
「何だって!?」
樹斗が消えたというのではこうしてはいられない。
言いながら部屋を見渡す。
「どこに消えたって」
「だから消えたんだってば」
話が通じていない・・・しばらく無言だったが、尚が落ち着くのを待って蒼が話しかけた。
「どういうことなんだ」
「どうもこうも私が知りたいくらいです。」
そういいながら尚はさっき起きた出来事を言うと、蒼は「邪魔したな」というとすぐに走り出す。
向かう先は自分の家である。
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