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★冴川兄弟のドタバタ珍騒動 第一章 010
普通ならとっくに気絶していただろうが、そうすることはできなかった。そんな余裕はなかったからだ。拓也の安全を確保して紅の助けになろうと考えていて、どうすればそんなたいそうなことができるのだろうと集中していたので、状況の変化がわかった。
蒼の言ったとおりに確かに人だった。紅の放った鳥にしめられて姿がはっきり分からないが、確かに人の形をしていた。
紅は気づいていないようだ。目の紅さは、炎のように紅い「気」のせいか、いつにもまして紅いようにおもわれる。そんな紅を見て蒼は何かおかしいと思った。何か不自然な感じがするのだ。
紅を観察でもするように身長に見ていて、その不思議な感じがしたわけを探そうとする。
ふいに蒼の腕を誰かがつかんだ。拓也だった。
「悪いけどちょっと起こしてくれないか。力がでないんだ」
蒼に頼むと起き上がろうと努力する。
「大丈夫か?」
拓也を起こしてやると、また紅の法を向いて観察し始める。卓也はこの状況を見て一瞬沈黙したが鋭いことを言った。
「紅の奴、どうしたんだ。立ったまま気絶しているのか?」
「それだ!」
そう叫ぶと紅に向かって飛びついた。
「紅兄起きろ!でないと樹斗に殴られるぞ!」
拓也はあっけに取られていた。蒼は真面目だったのだが。紅は蒼に飛びつかれたため体勢を崩し、そのまま目を閉じるといきなり我に返ったように起きた。
「今何時?」
そういった紅をみて蒼は安心したのだが拓也は笑いをこらえていた。「樹斗に殴られるぞ」という一言で起きたと思ったら「今何時」とは、笑うしかないではないか。
「拓也か?そこにいるのは。なんでうちにいるんだ?」
「さっきも言ったが…別にいいだろ俺がいても。それよりそこの奴にも聞かないのか?」
拓也が言ったのはさっきの子供がまだ部屋にいたからだ。
「?………誰かいるのか?」
「………」
先ほどの子供は無表情というよりは怒っているようだった。それもそうだ。散々さっき戦っていたのにいきなり態度が変わったのだから。髪の色が薄く、身体全体そんなに目立たない格好で、顔を髪が覆っていて表情が良く分からない。ついでに言うと雰囲気も代わっており性別もわかりにくい。
「覚えてないのか?紅兄。さっきそいつとやりあってたんだぜ」
「何を言っているんだ。拓也がいるのは分かったが、まだ誰かいるのか?」
この驚きようからして覚えていないだろう。紅は昔からけんかを売られたとき、売られたのは覚えているけどその後どうなったのかは覚えていなくて、それなのに樹斗以外には何故か勝っていたのだ。
「もしかして、これがないから見えないとか?」
拓也が思い出したように眼鏡を取り出して紅にかけてやる。
「おい拓也。いつの間に取ったんだ?」
「さっきのようにけんかするのか?紅」
「はぐらかすなよ」
紅は怒ったようだった。だが拓也はそれを無視した。
「もう一度聞くぞ。きをうしなったままけんかするのか?」
紅だけではなく、拓也も気が短い方らしい。
「覚えてないんだけど……」
「そうか・・・」
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