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★冴川兄弟のドタバタ珍騒動 第一章 012
宝を見つけた先ほどの子供をすり抜けてその前に出ると紅や蒼の前ではなすときとは違い、何か奇妙な印象を与えた。それは恐ろしく冷たい捕らえようのない表情であった。
「……おまえはいったい」
あと一歩踏み出して手を伸ばせば目的のものに触れることが出来た。だが、いきなり目の前に現れて邪魔をするものがいた。
その目を見た瞬間に恐怖が襲ってくる。何か引っかかる。この顔は始めてみたのもだったか?いや、以前にもこの顔を見たことがあったはずだ。記憶回路を探ってみるがどうも霧がかっていて分からない。
「小僧、いやお嬢ちゃんかな。それをとって何をするつもりだったんだ?」
冷たい風が急に吹いてきたようだった。小僧とかお嬢ちゃんとか呼ばれて怒りがこみ上げる前に、圧倒され惨めな自分が、今ここでなにをしようとしていたのかすらも忘れかけていた。だが、あくまでも忘れたわけではない。
「私はこれをもって君主の元に帰る。それだけだ!」
声が震えていたが身体は震えていなかった。目の前に立っている人物に少しでも弱みを見せてはいけないと思ったからこその努力だったのだが、完全に成功したとはいえなかった。そんな子供を前にして、拓也は「少しは役にたつかもしれない」と評価した。
「誰に仕えているのかは知らないが、それは俺も狙っていたんでね。もって行かれると困るんだ」
「それは私には関係ないことだ。そこをどいてもらおうか」
神経を集中させ、相手の動きを見る。だが、この場ではどうしても不利だった。目的のものの近くにいる拓也は自分を無視して目当てのものを持っていきかねないのだ。
そんな自分を知ってかしらずか、いや知っているだろうが、面白そうに冷たい表情でこっちを見ている。
と、いきなり拓也の手が動いて自分の額に拓也の右手人指し指が刺さった。何かを植えつけられたようにミシッと音がした。
「きさま、私に何をした!」
勢いよく言ったところに蒼が駆けつけた。
「てめえ!人をおちょくりやがって!」
言うが早いか取り押さえにかかる。いきなり現れた蒼は不意をついたといえるだろう。この時拓也と蒼は向かい合わせになった。
* * *
「どうしてあんたが俺よりも先にこの部屋にいるんだ?」
蒼は途中で拓也が消えたことに気づいていなかった。拓也はちょうど良いとばかりに、
「さてね。紅がくるまで押さえていてくれよ」
などという。その表情は元に戻っていた。
「蒼!無事か?」
紅がそのあとを追って入ってくる。
「紅」
紅に声をかけた拓也はまるで別れの挨拶でもするかのようだった。
紅は不思議に思いながらも事務的なことを伝える。
「拓也。その刀に触ったりしたら恐ろしいことが起こる。早く離れて」
「それはできない」
そういうと刀を持ち、「じゃあ」と壁に向かって走るとそのまま消えてしまった。
紅は立ち尽くすしかなかった。しばらく沈黙していたがやがてこんなことを言う。
「拓也。僕の言ったことの意味が分かっていてあんなことしたのかな」
「分かっていたからしたんじゃないか。って……そんな事言ってる場合じゃないだろ」
さきほどの子供を抑えながらあきれた声で蒼が答える。
「蒼。これから拓也を迎えにいってきます。その子供を抑えておいて。あとで聞きたいことがあるから。何か変わったことが起きたら親に知らせなさい。いいね」
まるで子共に諭すように言う。でもこういうときが一番深刻な時であることは分かるつもりである。
「分かった。といいたいが、俺もついていく。当てはあるのか?」
「心当たりなら。危ないから今回は着いてくるな。親がだめなら静司にこっちに帰ってくるようにいって。状況を伝えるように」
「どうしてもなのか?」心底心配だと顔に出ている。
「大丈夫だよ。もし何かあったら頼む」
……いいだしたら聞かないんだ紅兄は…。
「静司兄にすぐに戻るように伝えるからな」
「………しかたないね」
・・・本当は後が怖いからなるべく静司には迷惑かけたくなかったのだけど・・・。
紅は一人で拓也を追った。
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