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★冴川兄弟のドタバタ珍騒動 第一章 013
紅は家を出て思い当たる場所へ急いでいった。そこはあの樹斗の通う学校である。中庭にある小さな噴水のところに何故かいるような気がしたのだ。乱丸が教えてくれているのかもしれない。
夜遅くにバイクで校庭を駆け抜けると中庭が見えた。そこに拓也はいた。その拓也のいる場所からそんなに遠くもない場所に気を失っている樹斗もいた。
…何故樹斗がこんなところに?
拓也は噴水の中央に立っていた。水は出ていないから濡れはしない。紅はバイクから降りると会談を駆け上り噴水のところまで走る。
不思議な光景だった。拓也が「乱丸」を鞘から離した時、黒いというよりも漆黒、暗黒といった霧が刀から出てきている。一方鞘は樹斗を主人と決めたのか、まばゆい光が照らされ、何かを生み出すようであった。闇に包まれながら必死に抵抗するように光は消えなかった。
だが、それは一瞬のことだった。拓也が刀を振り、振ったあとには空間に亀裂が入ったようだった。それは電気を帯びているようだった。
「拓也!!……なんだこの亀裂は」
「紅・・・やっぱり来たな」
いつもの笑顔で拓也がいう。ふてぶてしいことこの上ない。
「早くその乱丸をしまえ。それはいたずらに振り回してはならない。危険な代物なんだ!」
「そんなに血相をかえなくてもいい。きっと俺の方がこの刀のことを知っている」
静かに応える拓也に違和感を覚える。紅はあらためて問う。
「なら何故こんなことを・・・」
「おまえの為だ・・・といったらどうする?」
目が笑っていない。互いに相手を見つめるが拓也が先にその視線をはずす。
「冗談だ。・・・この刀と妹を返して欲しかったら俺の後を追うんだな」
急に強い風が吹くと切れ目が開き、樹斗を抱えて拓也がその切れ目のなかに入ってしまった。
「拓也!!」
事態は深刻だった。風がまとわりついて髪が絡む前が見えにくくなったと思ったら眼鏡が外れてしまった。
「しまった。眼鏡が……」
はずれた眼鏡をつかむと何かに躓いた。
「!!」
もう遅かった。今や紅に光る紅の瞳も意味を成さない。
強風にあおられ紅は亀裂の中に吸い込まれるようにして入っていった。
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