★冴川兄弟のドタバタ珍騒動 第二章 003

「何驚いてんだ?俺がここに居ると思って来たんじゃなかったのか?」

そういって拓也が紅の前に降りてくる。宙を浮くように・・・。
そんなことにはお構いなしに紅はいう。

「そうだけど・・・・・・」

何かがおかしい。拓也が居ると思ってきたのは確かだ。けどそれはあの子だと思って・・・・・・。

「あの花はどうした?一輪くらいは残っただろう?」
「やっぱり・・・あの時のあの子は拓也だったのか・・・」
「そうだ」

お互いに見つめあう。いぶかしむように紅がいう。

「なんで言ってくれなかったんだ」

拓也がきょとんとする。そして罰の悪そうな顔をする。

「いや・・・その・・・まぁ。てっきり女の子だと思ってたんだよ・・・」
「はぁ?」

今度は紅がキョトンとする。絶句しているともいう・・・。

「つまりだ。4年一緒に居たけど俺はあの時の女の子を捜すことで頭が一杯で気づかなかったんだなぁこれが」

かわいた笑いでそっぽを向いて話す拓也になんだか毒気をぬかれてしまう。

「でもこの前気づいた。おまえの瞳をみて。何だか無性に悲しいのと納得してる自分と複雑な気分ではあったけどな」

そういって紅の頭をなでる。樹斗を背負っているのでそれを払えない紅はむっとしていう。

「拓也・・・でもどうして僕たちの世界に?」
「紅のところにいったのか?そんなの簡単な動機だ。また会いたかったからだよ」

優しい顔で拓也がいう。「少し歩こうか」と先を歩きながら続ける。

「ここは何もないんだ。何もね。人も居ない。動物がいないんだ。細菌やバクテリアなんかはいるんだろうけど話せる相手は植物だ。紅が来た時は本当に驚いたよ。自分と同じように揺る舞える奴なんていなかったから」

そういって立ち止まる。

「俺はどうやらこの世界の突然変異らしくてな。親とかもわからないんだ。植物達も俺がどこから来たのか知らないらしい。いつか気づいたら一人ここにいた」

紅はただ聞くだけだった。幼い頃はこんな話はしていない。

「植物と話しているときも面白かったけれど、おまえといた時がすごく楽しかったんだ。おまえが帰ったあとは寂しくてぽっかりとなにかが足りなくなってしまったんだ・・・だから」
「だから・・・?」
「俺は・・・おまえに会いに行けばいいと思ったんだ」

拓也の声は震えていた。

「植物たちと相談して世界の勉強もした。もとは紅と同じ世界の植物もここにはいるから。意思疎通で会話する俺には言語の心配もないからその分はやく行けたと思う」
「拓也・・・そんなに僕に?」
「ああ。だから探してた。でも近くにいたんだな」
「そうだね。始めてあったのは大学だったね」
「ある程度の場所なら把握できるんだ。その瞳さえ発動されていれば。だからそれらしい波動が残っている近辺の大学を探した。もう少しはやくこの世界についていればもっと早く見つかったのかもしれないな」
「大学に入ってからは平和だったからね」



二人は神殿の奥に入った。紅は樹斗を寝かせる。毛布などがないので自分の上着をかけてやる。

「変わってないな」

本当にわずかな時間だったがこの部屋は印象にのこっているのだった。
桃色の柱が何本も立ち並び、その奥に流れる泉。静かな空間。忘れられない何か特別な雰囲気を放っているこの場所。

「そういえば、どうやってあの世界でうまくやっていたんだ?拓也」





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