★冴川兄弟のドタバタ珍騒動 第二章 004

「トメリカのマスターは知ってるか?その人にお世話になってね。寮に入れたのもあの人のおかげ」

拓也は懐かしそうに話しているが今の話では怪しくはないか・・・?

「拓也・・・寮にはいるにはそれなりに審査があったはずなんだけどそれをなんとかしてくれちゃったの?」
「ああ。おかげで助かった」
「そっか・・・」

あまり詳しく聞かないほうがよいのだろうか・・・それ以上はつっこまず会話がとぎれる。きまずい雰囲気のなか拓也が「こっちにこい」と神殿の奥へと案内する。樹斗は寝かせたまま紅は拓也についていった。


   * * *


「しかし、ここは本当に静かだ」

植物だけだからだろうか、鳥のさえずりも聞こえない。自動車のエンジン音も聞こえない。

「死んだ国のようだろう。ここの主は俺たち人間じゃない。植物だ。聞こえないだろうが良く耳を澄ますと何か話しているのが分かる。俺が見せたかったのはあれだ」

随分と高い位置まで登っていた様だった。そこは周囲を見渡す展望台のようだった。拓也の人差し指の先にはあのお花畑が見える。どこまで続いているのか地平線のように果てまで見える。そのおくには黒ずんだ雲がみえる。



「何だあれは。あんなもの俺がいた時にはなかった」

拓也が驚いた声を出す。

「そうなのか?」

紅は良く見えないのか目を凝らしてその黒い雲の方をみる。

「あれは・・・危険だ。近づくなよ」

珍しく拓也が警戒している。いつものほほんとしているのに不思議だ。だからくすくすと笑いながら応える。

「大丈夫。あんなところまで出歩かないよ。樹斗もいるしね。それに・・・」
「それに・・・なんだ?」

紅を覗き込む拓也に紅は

「いや。なんでもないよ・・・」

そういって眼鏡のはなの部分に手を当てて掛けなおす。紅の癖だ。

「気になる」

そういって拓也は紅の眼鏡をはずすと紅のあごをとらえる。紅はまたか・・・と隙をつかれた事に屈辱を感じると共に苛立ちが増してくる。

「返せよ」

そういって取り上げられた眼鏡をとろうと両手を伸ばすが拓也の身長の方が高く手が届かなかった。

「こんな時でも瞳は紅くならないのな」
「知るか!」

屈辱だ。どうやら拓也の方が力が強いらしい。・・・竹刀を持っていればこんな奴!!と紅がジタバタしていると拓也がそのまま包み込んでくる。

「な・・・何?」
「おまえ・・・俺の気持ち分かってないだろう」

いまにも泣きそうな顔でそんなことを言われては・・・と紅があせり始めると拓也がぽんぽんと頭をたたく。



「あまり心配させるな」

そう震える声でいう拓也に紅は

「悪かった。あそこにはいかないから」

と拓也をなだめる。そして気になっていたことを聞く。

「それにしてもなんでこの世界に来ることにしたんだ?」
「それは・・・まだ言えない。・・・このまま押し倒していい?」

ぷつりと何かがキレた・・・。





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