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★冴川兄弟のドタバタ珍騒動 第二章 006
「この身体も久しぶりですね」
そういって紅を振り向く。
「動きそうにありませんね。まぁ、いいでしょう。乱丸はいただいていきます」
拓也の姿をした石衷の声があたりに響く。そのまま動かない紅は意識だけははっきりしていた。ただ身体が動かなかっただけである。
「すぐに動けるようになりますよ。それまではどうあがこうと、身体は動きません」
そういった石衷はすべてを把握しているのだろう。
「また僕に会いたければ、拓也に会いたければあの花畑の向こうに見える宮殿にいらっしゃい。あなたの兄弟もこちらに呼んでおきましたから。きっと歓迎することをお約束しますよ。そうそう、ついでといっては何ですが、妹さんは預かっておきますよ」
忘れていたとばかりに宙に浮く樹斗の姿がみえた。「気」で浮かせているのだろうか。黒い霧がかかっているが身体に害はなさそうだ。
「それでは楽しみに待っていますよ。あなたのご兄弟が近くまで来ているようですのでひとまずさよならということで。宮殿に着いたときには私の名前を呼んでください。私の名は石衷」
まるで今のこの状況を楽しんでいるかのように拓也の姿をした石衷はいった。
後ろを向いて歩くのかと思ったらきえてしまった。いつの間にか樹斗も姿を消しており、一人さびしく紅は残されてしまった。
どのくらいたったのか。後ろからどたばたと誰かが走ってくる足音がした。
* * *
「紅兄!大丈夫か」
声をかけてきたのは蒼だった。まだ誰かいるようだったが蒼がしがみついてきたので周りがよくわからない。だが誰かはわかっている。
「紅。とっても忙しい俺をこんな訳の分からんことに巻き込んだ分の報酬はもちろんもらえるんだろうね?」
そうだこいつだ。静司だ。いつもふざけているのかまじめなのかわからない扱いにくい弟だ。
ゆっくりと歩いてきて悠然と立つその姿が目に浮かぶ。
「あれ?蒼、ここに書いてある数字変わらなかった?さっきは3だったと思ったのに、2になってないか?」
「どこだよ」
「ここ、ここ」
額に指をさす。その下では2と紅くかかれている。
「そういえば紅、なんで動かないの?」
そんなことを静司が言っている間に、紅の額の赤い文字が1になる。
「あれ、1になったぜ。0になったらどうなるんだ?」
「動くんじゃないの?いい趣味してるよな、こんなことした人。まぁかかった方もかかったほうだし、ちょっとカッコ悪いけどしょうがないよねえ。自業自得だもんねえ」
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