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★冴川兄弟のドタバタ珍騒動 第二章 013
「紅兄、樹斗も心配してる。早く帰るぞ。歩けるか?」
「大丈夫だ」
さすがに蒼にまでおぶられるのは勘弁してもらいたい。気力で立ち上がると振り返って静司にいう。
「後は任せて大丈夫か?」
「もちろん。その為にここにいるんだし。―――――紅に何かあったらあとでおしおきな」
後半は蒼に向かっていったのもだ。「えー」といいながらも頼りにされていると知っているので悪い気はしない。「じゃあ」といって帰途に着く。
蒼は背後で空気が変わったのを感じていたが静司を信じて、というよりは無事を確信していたので相手を気の毒に思いながらも何も言わずにそのまま紅とともに家に帰った。
「昼のときはやってくれたよな。おかげでひどい目にあったぜ。もうようしゃしねえぞ」
手にはナイフやら鉄パイプやら、どこから持ってきたんだか凶器が握られているらしかった。金属音が響く。
「元気だねえ。ちゃんと止めてあげたのに、恩をあだでかえすとは」
「うるせえ。やっちまえ!」
二十人ほどだろうか。それでも余裕たっぷりの静司に上級生が苛立つ。―――――昼の件で紅に手をだすことはないと思うが・・・
静司は思ったが上級生の態度からそれを改めた。きっとまた同じ事を繰り返すだろう。それならばと手加減なしで相手をすることにした。
その日帰ってきた静司は腕にかすり傷をしていたが何事もなかったかのように帰ってきた。「心配した?」といって僕に笑いかけるぐらいだから大丈夫だろうと思ったものだったが、気になる一言を残していた。「ごめんね?」
以降何故か静司ではなく僕が狙われるようになった。それに気になる視線もあった。さすがにそう何度もやられるわけにはいかないと初めのころは竹刀を持ち出した。
これでも道場の長男なのだ。剣道の腕ならば静司に引けをとらない。ただし日ごろの生活で体力はそんなにあるほうではなかったので長期戦にならないよう注意しながら凌いでいた。三ヶ月もすると相応に強くなってしまったようで、竹刀を持ち出すこともなくなった。
ある日静司がいったものだった。
「さすが。もう一人で相手できるようになったか。日頃から体力つけとけばよかったんだよな」
「静司。お前どういうつもりだ」
「なに。毎回俺が止めに入るのも面倒だろ。気を失わずにすむには紅が強くなればいいんだからさ」
とこれである。いつも感じていた視線はなんのことはない、静司だったのだ。いつも見守ってくれていたらしい。
「はめたな?」
「人聞きの悪い。俺はそれ相応に対処しただけさ」
しれっという。確かに体力不足だったが、随分と無茶をさせる。
「お前な・・・」
「――――それにもう、気を失うこともないだろうしさ」
こんなに脱力したのは後にも先にもないだろう。静司はどうやらこの一つの信念だけで僕に上級生の相手をさせていたらしい。ご丁寧に見物をしながらだ。あきれたことにそんな静司が本気だということもそれを許してしまっている自分がいるということも分かってしまった。
「―――――心配かけた・・・な」
「うん」
子供がいたずらを見つかったときのような笑顔だ。この時の静司の表情は忘れがたい。そんな昔のことに思いをはせていると
「紅?何をぼけっとしてるのさ。行くぞ。さっさと樹斗を連れ戻して帰るんだからな」
いきなり声をかけられてびっくりした紅だったが蒼ももうおきて荷物をまとめているのをみて、あわただしく自分に割り当てられたものを袋に詰める。この袋は書物が置いてあった場所にあったらしい。隠し場所は一つの実験室のようだった。
三人が準備を終えたのは樹斗が連れて行かれてから4日目の朝だった。
「さて、身体の調子も戻ったようだし、行こうか」
三人は神殿をでた。
向かう先は樹斗のいるビュオラ中心部から少し離れた暗い雲のかかるラドウ神殿だ。
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