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★冴川兄弟のドタバタ珍騒動 第三章 001
「やっと進みだしましたか・・・」
拓也の姿をしていながら石衷と名乗った男は、悠々と居心地によさそうな椅子にもたれかかり、モニターに写る三人を見物していた。そのそばでは、目を覚ました樹斗が無愛想にたっている。
この二人の他には、特に人影はみられない。だが、樹斗には感じられた。誰かが居る。この奥の部屋に、まだ見たことなのい知らない誰かがいることが。
「このぶんだと、早くても夕方までかかるでしょう。それにしてもすごいですね。あの紅という人物は、三日間も寝たきりで、何か薬でも飲んだのでしょうか」
薄い笑みを浮かべる。だが樹斗はその笑いがきにいらなかった。紅が馬鹿にされたようで腹が立ったのだ。
「紅は睡眠時間をためることができるんだ。あの分だと一週間くらいは寝ていなかったのだろう」
無愛想な顔で無愛想に言うと、モニターから目を離して拓也の姿をした石衷という男に話しかけた。
「そろそろ私をこんなところにつれてきた理由を聞かせてもらいたいな」
ゆっくりと腰をあげようとした石衷は、めずらしくしゃべった樹斗に目を向けた。互いに目を合わせ、しばらくそのまま動かないでいた。そこまで広いとも思えない部屋に沈黙が続く。窓もんあければクーラーもないこのやたら暑い部屋に汗一滴もたらさない二人は、沈黙をやぶろうとはしなかった。
この部屋はよくがっこうなどにみられる視聴覚室のようなところで、あるものは石衷の座っている椅子と、長いデスクくらいだ。声は響かないようにセットしてある。
二人の沈黙を破ったのは新しく入ってきたきれいなお姉さんだった。
「石衷。そのくらい話してあげてもいいんじゃない?出ないとその子何しだすかわからないわよ」
「これはこれは、榊さんではありませんか」
榊と呼ばれたお姉さんはトップモデルのような足取りで近づいてくる。
「樹斗ちゃんだっけ?連れてきた理由を教えてあげるわ」
ゆっくりと席を立った石衷の座っていた椅子に、優雅に座って話しかける。
「榊さん、あまり面白がって話しすぎると後々面倒ですよ」
うんざりといった表情で石衷は榊を見ていたが、榊はそれを一言で返した。
「そのときはよろしくね」
苦い顔をして石衷はその場を去った。榊とはあまり話していたくなかったらしい。それを知ってかしらずか、榊は「話したこときいといたほうがいいんじゃない?それこそ墓穴を掘りかねないわよ」などという。石衷はそれを聞いていたのかいなかったのか、返事をしなかった。
榊は絹で作られたような中国風の服を来て見事にできた薄い金のリングを腕につけていた。色は全体的に赤で長い黒髪が服にかかっている。
「樹斗ちゃんどうしたの?だまっちゃって」
そういわれてはっとした。石衷画そばに居たときは絶対しゃべってやるものかと口をつぐんでいたので、そのまま無口になってしまったようだった。
「別にきにしないでくれ」
「そう。じゃあお話しするわ。あなたをここに連れてきたのは沓木様のためなの」
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