冴川兄弟のドタバタ珍騒動 第2章

   
紅は不思議な感覚に懐かしさがこみ上げてきたいた。重力はある。だが、この空間では非常にゆっくりと降りていくのだ。

――前にもこのようなことがあった。あれは本当にまだ小さい頃。今回と同じ「乱丸」に触れた時だった。


***



親には絶対に入ってはいけないと言われてきたあの屋根裏部屋に、どうしても入りたくなった時があった。こっそり鍵を取って屋根裏部屋に入った時、最初に目に付いたのがこの「乱丸」だった。そして触ってしまった時、気づいたらお花畑に立っていた。

不思議だった。子供が一人で遊んでいた。あたり一面花以外何もないのに、何故こんなところで遊んでいたのか。

空が明るかったのにその子供に気づいたとき、暗い雲が押し寄せてきて雷が鳴った。それが合図だったかのように、いきなり大粒の雨が降ってきた。その子供は僕に気がついたようだった。いきなり走り出して僕を避けようとしているのが分かった。だけど、そのこが遠くなるにつれてすごく不安になってきた。ここは一体どこなんだ?僕はどうしてこんなところにいるんだろう。

気軽いたときには走り去っていたはずの子供を捕まえて話しかけていた。

「君は一体誰なの?」

子供は怯えていた。寒さで震えていたのかもしれない。
どうしてこんなことを……。ずっと記憶にはなかったのに、つい昨日あったことのように思い出せる。
そしてあの子は、そう、こう言っていたんだ。

「君は一体誰なの?」

同じことを繰り返していってきたんだ。

「ふざけないでくれよ。ああそうか、僕は冴川紅。紅って呼んでよ」
「ふざけないでくれよ。ああそうか、僕は冴川紅。紅って呼んでよ」

その時僕はどんな顔をしていたんだろう。でもむきになって言い返したんだ。

「君の名前は?」
「君の名前は?」

「僕の名前は?」
「僕の名前は?」

「僕の名前は紅だよ」
「僕の名前は拓也だよ」

「えっ?」
「えっ?」

何かおかしいと思ったんだ。だからもう一度いったんだ。

「僕の名前は紅だよ」

すると笑って答えてくれて、

「僕の名前は拓也だよ」

といったんだ。





――拓也……まさかあの時の拓也なのか……?
結局そのあとははぐらかされっぱなしだったけど。分かったことはここがクロスというところなんだということぐらいだった。

いつの間にか雨もやんでいて、周りが随分明るくなっていることにいづいたのは大分経ってからだった。

拓也といったあの子と遊んでいたのはどれくらいだったのか。気づいたら夜になっていて、帰らないといけないと思った時に気づいたんだ。

「僕、どうやって家に帰ればいいの?」

拓也に聞いた自分はまだ幼かったのだろう。そんな紅に拓也は少し周りを見渡して「こっち」といって連れて行ってくれた。そんな拓也も当時の紅と同じくらいの年にしか見えなかった。

連れて行ってくれた場所はひっそりとそびえ立つ神殿だった。ヨルダンのぺトラのような入り口から中に入ると泉が見えた。

「これをもってあの中に入れば、きっと帰れるよ」

そういわれて、さっきたくさん咲いていた花を持たされて、泉の中に入った。そして、たしか約束をしたんだ。

「もし僕が・・・・・・」

拓也の手が僕の目を覆って熱くなって・・・・・・そのまま意識を手放した。





気づいたら親が目の前にいて、びっくりした。

「屋根裏部屋には入っちゃいけないと言っていただろう」
「ごめんなさい」

あとで聞いた話だが、僕は「乱丸」の前でびしょびしょに濡れて寝ていたらしい。手には拓也に渡された花が一輪だけ残っていた。


***


ふわふわとゆっくり降りた場所には、小さい頃と同じようにかわいらしい花が咲いていた。あの頃と違うのは拓也といったあの子がいないだけ。変わりに今回は樹斗がいた。

ゆっくりとあとからおりてくる樹斗を支えると「乱丸」のさやはその上から紅の差し伸べた手をすり抜けて、樹斗の身体に入るように消えてしまった。

一瞬何が起こったのかよく分からなかったが、特に害がなさそうなので、とりあえず樹斗を起こすことにした。どんな時でも動じない紅である。

「樹斗。起きなさい」

ほっぺたを軽くたたく。が、それだけでは起きそうになかった。今度は身体を揺すってみる。だがやはり起きる気配はない。
仕方なく樹斗を背負って歩き始めた。



子供の頃着たときとそんなに変わっていない。目線は高くなったが・・・。
あの時拓也といったあの子は神殿に連れて行ってくれた。もしかしたら神殿にいるかもしれない。
辺りを見渡すと一面がお花畑だった。視界に左手に何か建物らしいものが見えたのでそっちに進むことにした。

あの時長かった道も、今ではさほど長くはない。すぐにその建物についた。
まるで時が止まっているのではないかと思わせるほど静かだった。

「やっぱりきたな、紅」


上からいきなり声がした。聞きなれた声だった。

「拓也?」

「何驚いてんだ?俺がここに居ると思って来たんじゃなかったのか?」

そういって拓也が紅の前に降りてくる。宙を浮くように・・・。
そんなことにはお構いなしに紅はいう。

「そうだけど・・・・・・」

何かがおかしい。拓也が居ると思ってきたのは確かだ。けどそれはあの子だと思って・・・・・・。

「あの花はどうした?一輪くらいは残っただろう?」
「やっぱり・・・あの時のあの子は拓也だったのか・・・」
「そうだ」

お互いに見つめあう。いぶかしむように紅がいう。

「なんで言ってくれなかったんだ」

拓也がきょとんとする。そして罰の悪そうな顔をする。

「いや・・・その・・・まぁ。てっきり女の子だと思ってたんだよ・・・」
「はぁ?」

今度は紅がキョトンとする。絶句しているともいう・・・。

「つまりだ。4年一緒に居たけど俺はあの時の女の子を捜すことで頭が一杯で気づかなかったんだなぁこれが」

かわいた笑いでそっぽを向いて話す拓也になんだか毒気をぬかれてしまう。

「でもこの前気づいた。おまえの瞳をみて。何だか無性に悲しいのと納得してる自分と複雑な気分ではあったけどな」

そういって紅の頭をなでる。樹斗を背負っているのでそれを払えない紅はむっとしていう。

「拓也・・・でもどうして僕たちの世界に?」
「紅のところにいったのか?そんなの簡単な動機だ。また会いたかったからだよ」

優しい顔で拓也がいう。「少し歩こうか」と先を歩きながら続ける。

「ここは何もないんだ。何もね。人も居ない。動物がいないんだ。細菌やバクテリアなんかはいるんだろうけど話せる相手は植物だ。紅が来た時は本当に驚いたよ。自分と同じように揺る舞える奴なんていなかったから」

そういって立ち止まる。

「俺はどうやらこの世界の突然変異らしくてな。親とかもわからないんだ。植物達も俺がどこから来たのか知らないらしい。いつか気づいたら一人ここにいた」

紅はただ聞くだけだった。幼い頃はこんな話はしていない。

「植物と話しているときも面白かったけれど、おまえといた時がすごく楽しかったんだ。おまえが帰ったあとは寂しくてぽっかりとなにかが足りなくなってしまったんだ・・・だから」
「だから・・・?」
「俺は・・・おまえに会いに行けばいいと思ったんだ」

拓也の声は震えていた。

「植物たちと相談して世界の勉強もした。もとは紅と同じ世界の植物もここにはいるから。意思疎通で会話する俺には言語の心配もないからその分はやく行けたと思う」
「拓也・・・そんなに僕に?」
「ああ。だから探してた。でも近くにいたんだな」
「そうだね。始めてあったのは大学だったね」
「ある程度の場所なら把握できるんだ。その瞳さえ発動されていれば。だからそれらしい波動が残っている近辺の大学を探した。もう少しはやくこの世界についていればもっと早く見つかったのかもしれないな」
「大学に入ってからは平和だったからね」



二人は神殿の奥に入った。紅は樹斗を寝かせる。毛布などがないので自分の上着をかけてやる。

「変わってないな」

本当にわずかな時間だったがこの部屋は印象にのこっているのだった。
桃色の柱が何本も立ち並び、その奥に流れる泉。静かな空間。忘れられない何か特別な雰囲気を放っているこの場所。

「そういえば、どうやってあの世界でうまくやっていたんだ?拓也」
「トメリカのマスターは知ってるか?その人にお世話になってね。寮に入れたのもあの人のおかげ」

拓也は懐かしそうに話しているが今の話では怪しくはないか・・・?

「拓也・・・寮にはいるにはそれなりに審査があったはずなんだけどそれをなんとかしてくれちゃったの?」
「ああ。おかげで助かった」
「そっか・・・」

あまり詳しく聞かないほうがよいのだろうか・・・それ以上はつっこまず会話がとぎれる。きまずい雰囲気のなか拓也が「こっちにこい」と神殿の奥へと案内する。樹斗は寝かせたまま紅は拓也についていった。


***


「しかし、ここは本当に静かだ」

植物だけだからだろうか、鳥のさえずりも聞こえない。自動車のエンジン音も聞こえない。

「死んだ国のようだろう。ここの主は俺たち人間じゃない。植物だ。聞こえないだろうが良く耳を澄ますと何か話しているのが分かる。俺が見せたかったのはあれだ」

随分と高い位置まで登っていた様だった。そこは周囲を見渡す展望台のようだった。拓也の人差し指の先にはあのお花畑が見える。どこまで続いているのか地平線のように果てまで見える。そのおくには黒ずんだ雲がみえる。



「何だあれは。あんなもの俺がいた時にはなかった」

拓也が驚いた声を出す。

「そうなのか?」

紅は良く見えないのか目を凝らしてその黒い雲の方をみる。

「あれは・・・危険だ。近づくなよ」

珍しく拓也が警戒している。いつものほほんとしているのに不思議だ。だからくすくすと笑いながら応える。

「大丈夫。あんなところまで出歩かないよ。樹斗もいるしね。それに・・・」
「それに・・・なんだ?」

紅を覗き込む拓也に紅は

「いや。なんでもないよ・・・」

そういって眼鏡のはなの部分に手を当てて掛けなおす。紅の癖だ。

「気になる」

そういって拓也は紅の眼鏡をはずすと紅のあごをとらえる。紅はまたか・・・と隙をつかれた事に屈辱を感じると共に苛立ちが増してくる。

「返せよ」

そういって取り上げられた眼鏡をとろうと両手を伸ばすが拓也の身長の方が高く手が届かなかった。

「こんな時でも瞳は紅くならないのな」
「知るか!」

屈辱だ。どうやら拓也の方が力が強いらしい。・・・竹刀を持っていればこんな奴!!と紅がジタバタしていると拓也がそのまま包み込んでくる。

「な・・・何?」
「おまえ・・・俺の気持ち分かってないだろう」

いまにも泣きそうな顔でそんなことを言われては・・・と紅があせり始めると拓也がぽんぽんと頭をたたく。



「あまり心配させるな」

そう震える声でいう拓也に紅は

「悪かった。あそこにはいかないから」

と拓也をなだめる。そして気になっていたことを聞く。

「それにしてもなんでこの世界に来ることにしたんだ?」
「それは・・・まだ言えない。・・・このまま押し倒していい?」

ぷつりと何かがキレた・・・。
「いい加減にしろ!!」

紅がいきりグーでなぐると拓也は数メートルは吹っ飛んだ。

「う・・・マジでなぐるこたぁないだろが!!」
「限度があるんだよ拓也。心配してるのはわかったから俺もおとなしくしてるし。」
「ひどいなぁ。あれは本当に危険だから気をつけてほしいんだけど。・・・そういえば紅が初めて来たときにもあれと同じような雲が見えたな」

あの雨を降らせた黒い雲のことだろうかと紅は考えた。確かに似ている。

「何も起こらなければいいんだが。面倒なことはこの際無視したいな」

拓也がひとり雲の様子を見ながらつぶやく。

「そういいたい気持ちはよくわかるよ。こっちも何かあったらまた静司に仮を作らないといけないからな。すでに来る前にひとつ作ってるし。いつも助けられてばかりで。」

拓也はおかしくなって笑い出してしまった。紅は頼りない。これでは弟たちに心配されるのも無理はないだろう。

「拓也。なに笑ってるんだよ」
「いや。なんでもないよ」

紅は拓也に忠告をいれる。めがねをかけているためか、それとも体格、雰囲気からしてやさしそうだからか、そんなに怖そうにみえない。そんな紅をみてまた笑いをこらえているところに異変がおきた。拓也がふと紅をみる。

先ほどと変わらない姿だが雰囲気が違う。冷たい冷気をまとったその姿は見るものを凍らせるようだ。めがねの下の瞳も冷たい光を放っているようだ。

「紅?」
「久しぶりですね拓也」


***


冷たい表情に冷たい声。この声を拓也は知っていた。

「お前は・・・石衷」
「そう。よく覚えていましたね、私の分身拓也。異世界はどうでしたか?このような人間にとらわれるとは哀れな分身だ」

くくくと笑うその姿は紅ではありえない。

「なにしにきた。今まで接触してこなかったのに今になって何故ここに」

紅の顔でニタリと笑う石衷は面白そうにいう。

「なにしにとはご挨拶ですね。私は忙しい身。用が済んだらすぐに帰りますが目的はもうわかっているのでしょう?」
「乱丸だろ。何に使うのかなんて考えたくもないがな」
「よくわかっているじゃありませんか」

余裕たっぷりの石衷に拓也はすでに呑まれていた。
乱丸のありかをすでに石衷は知っているのだ。だからこその余裕だろう。俺にわざわざ話しかけているのも余興とみていいだろう。それだけの力の差があることは身をもって知っている。

「さて、久しぶりの挨拶もすみましたし、手っ取り早く事を進めるためにも貴方の体を借りたほうがよさそうですね」
「なに!?」

紅がその場に崩れ落ちた。
「この身体も久しぶりですね」

そういって紅を振り向く。

「動きそうにありませんね。まぁ、いいでしょう。乱丸はいただいていきます」

拓也の姿をした石衷の声があたりに響く。そのまま動かない紅は意識だけははっきりしていた。ただ身体が動かなかっただけである。

「すぐに動けるようになりますよ。それまではどうあがこうと、身体は動きません」

そういった石衷はすべてを把握しているのだろう。

「また僕に会いたければ、拓也に会いたければあの花畑の向こうに見える宮殿にいらっしゃい。あなたの兄弟もこちらに呼んでおきましたから。きっと歓迎することをお約束しますよ。そうそう、ついでといっては何ですが、妹さんは預かっておきますよ」

忘れていたとばかりに宙に浮く樹斗の姿がみえた。「気」で浮かせているのだろうか。黒い霧がかかっているが身体に害はなさそうだ。

「それでは楽しみに待っていますよ。あなたのご兄弟が近くまで来ているようですのでひとまずさよならということで。宮殿に着いたときには私の名前を呼んでください。私の名は石衷」

まるで今のこの状況を楽しんでいるかのように拓也の姿をした石衷はいった。
後ろを向いて歩くのかと思ったらきえてしまった。いつの間にか樹斗も姿を消しており、一人さびしく紅は残されてしまった。




どのくらいたったのか。後ろからどたばたと誰かが走ってくる足音がした。

***

「紅兄!大丈夫か」

声をかけてきたのは蒼だった。まだ誰かいるようだったが蒼がしがみついてきたので周りがよくわからない。だが誰かはわかっている。

「紅。とっても忙しい俺をこんな訳の分からんことに巻き込んだ分の報酬はもちろんもらえるんだろうね?」

そうだこいつだ。静司だ。いつもふざけているのかまじめなのかわからない扱いにくい弟だ。
ゆっくりと歩いてきて悠然と立つその姿が目に浮かぶ。

「あれ?蒼、ここに書いてある数字変わらなかった?さっきは3だったと思ったのに、2になってないか?」
「どこだよ」
「ここ、ここ」

額に指をさす。その下では2と紅くかかれている。

「そういえば紅、なんで動かないの?」

そんなことを静司が言っている間に、紅の額の赤い文字が1になる。

「あれ、1になったぜ。0になったらどうなるんだ?」
「動くんじゃないの?いい趣味してるよな、こんなことした人。まぁかかった方もかかったほうだし、ちょっとカッコ悪いけどしょうがないよねえ。自業自得だもんねえ」
面白そうに、だが絶対嫌味だ。静司のお得意は兄ちゃんいびりだ。動けるようになったらそれ相応のことはさせてもらうぞ。

「0じゃなくて、消えちまったぜ。紅兄動けるか?」

身体を支えてもらって情けないが、なぜか力を吸い取られたみたいに身体が動かなかった。固定するために立たされた状態で固まったように動けなかったのに、それが解けたら疲労で立てないとは。

「情けないよ。俺たちが来なかったらどうするつもりだったの?」

そんなことをいいながら紅をかかえて休むところを探す。蒼はさっさと走って場所をみつける。

「ちょっとまたやせたんじゃないの?軽すぎるよ」

休めそうなところにおろすとき、静司が言った。それが思いやりなのか、僻みなのかはよくわからない。
静司は冴川家の次男坊だ。なかなか整ったかおだちをしていて美形、紅より背が高い。大抵のことはそつなくこなす。特に得意なのはスポーツだが本人はそれを隠す傾向にある。性格はイタズラ好きの悪がきだろう。蒼もその影響をうけていると紅は考えている。

「ところで、拓也さんと樹斗はどうしたんだ紅兄」

心配そうにたずねる蒼に紅ははなしにくかった。だが隠していることはできない。紅は今までの分かる限りのことを話した。

「実は・・・」

***

「なんだよそれ」

そういったきり蒼は黙ってしまった。

「紅のその疲れを取ってから出かけよう。ここで話しているだけでは何も始まらないけど、そんな身体じゃ歩けないだろう」

いたって前向きな静司の言葉に二人はうなずいた。
行かないといけないのだ。樹斗を取り返しに。



***



夕方くらいに紅は目を覚ました。一日くらい寝たのだろうか、身体が楽になった。そばでは蒼が寝ていた。この場所は、気づかなかったが神殿の中のようだった。
前に拓也につれてきてもらったのとは違うが白い柱が中央にある泉に向かって何本か建っている。泉には三段の階段を上がっていくようだ。ここの泉もあの神殿と同じようにどこかへ通じているのだろうか。

「白い色で包まれたこの神殿には、治癒効果があるんだって」

後ろから声をかけて来たのは静司だった。その手に何やら分厚い書物が握られている。白い書物だ。それに赤、青、黒、黄、緑の書物。

「いったいどうしたんだ?その書物は」
「ここ以外にも似たような場所がたくさんあったんで調べてたら隠し部屋を見つけたんだよ。なかなか面白いところだね。いまいち使いかたがわからないもんでもてあましてたところでこの本を見つけたんだ。読む?」

しゃがんで手の中から一つの書物を取り出して紅に渡す。手渡された赤い書物を開けてみると、中には見たことのない器具が書かれていた。

「これは・・・こんなことができるのか?」
先を読んでいた静司が付け足して説明する。

「その本は、特殊な能力を持ったものが書かれているみたいなんだ。たとえば何かを宮殿にしたり、植物にしたりね。後ろのほうをみてみな。見かけたことのあるものが載ってるから」

言われたとおりに後ろのほうをみてみる。特に知っているようなものはなさそうだが・・・
パラパラめくっていると、少し折り目がついているページがあった。そこには

「これは乱丸じゃないか。これのどこが・・・静司。ここにかいてあることは本当のことなのか?もしそうだとしたら大変なことになる。どの世界もめちゃくちゃだ」

読んでいる紅の手が震えている。それだけ書いてあることが危険なことなのだ。

「乱丸の能力は争いを起こすこと。ひとたび掲げれば憎しみで心が埋め尽くされ争いがおきる。かつて大規模に使われたのは日本の幕末。この剣が生まれたときだ。その後は小心者が使っていたためたいしたことは起きていないらしい。乱丸は使うものの心による。心の強いものほど乱丸の能力は引き出される」

静司は淡々と説明する。だが静司にも事の重大さは分かっている。もしこの刀を拓也がつかったならば間違いなく影響は広い範囲に起こるだろう。

「とりあえず乱丸はそういうものらしいよ。間違っても使おうなんて思わないでね」
「こんな恐ろしいものを使おうという奴の気が知れないね」

それを聞いて静司はいきなり笑い出してしまった。

「ああ、紅が使ってもきっとそんなたいしたことはないかもしれないけど」
「いきなり何を言うんだ」

笑いをかろうじて抑えているような静司はふざけた調子でいった。

「だってそうだろう、小心者が使ってもたいしたことは起きないって書いてあるんだから」
「僕が小心者だといいたいのか」
「そうだよ」

紅はすこし考えてみた。たしかに小心者にはそんなに価値のないものかもしれないが

「もし僕が小心者じゃなかったら拓也の二の舞をしたのだろうか」

真面目になっていきなり言う紅に静司はたじろいだが言葉ではこういった。

「そんなの紅しだいだろ?深く考えなくていいと思うけど。それよりほかにも見ておきたいものがあるんだ。こっちのも見てくれ」

今度は蒼い書物をとりだす。

「これはワープゾーンのことが書いてあるんだけど、なかなかいいのがなくてね。結局は歩いていくしかなさそうなんだけど、とりあえずこんなものがあるっていうのを知っていてほしいんだ。それに帰るときはこの中のどれで帰ればいいのかがのっているからね」
「やけに楽しそうだな。何がそんなに楽しいんだ?」

紅がいうと静司は笑い出した。軽く抑えていたが、

「だって久しぶりに会った紅ってば、いつもと変わらずなんだもん」

呆気にとられている紅をよそに静司はまた話し始めた。

「で、そうなると必要なものはだ、ここにある・・・そこの緑の本とってくれない」

紅は静司に緑の本渡す。

「サンキュ。・・・とあった。この地図なんだよね」

そこに広げられた地図にはこのクロスという場所を含めて、三つ大きく書かれていた。
ひとつはアメゴ、もうひとつはビュオラ、今回行くのはビュオラの方だ。



「そこで、ルートを割り出してみたり何があるのか調べていたらだね。こんなことになったんだよね」

上にもう一枚薄い紙を広げる。

「やけに準備がいいな・・・」
「それはもちろん、こんなところさっさとおさらばしたいからさ」

いいながら黒い書物を取り出す。

「この黒い本によるとその地図の森みたいなところにかかるときには白い本の72ページに書いてある小道具を持っていた方がいいみたいだ」
「それだけ見方がわかるなんて静司、いつから地図につよくなったんだ?」
「これが子供向けのやさしい本だからさ。誰かが小さい子供のために作ってあげたんだろう」
静司の手の中にある書物を見て紅は納得した。だが、おかしな点に気づいた。
「人の姿は見えないけど・・・」
「作ったのが人とは限らないだろう?ここにどんな奴が住んでいるのかなんてわからないからな。それに、こんなところに神殿があるんだから誰かが居たと過去形にすれば考えられるだろう。拓也先輩のように人は居たかもしれない」

まるで、一度考えた結果を言ったようだったが、紅はそれで満足した。

「それで、あの黄色い書物は?」
「あれはあけたらいけないらしいよ。今まで見てきた本の裏表紙を見てみな」
近くにあった青い書物の裏表紙をみてみる」
「黄色い書物は開いてはいけません」
青い字でそう書かれていた。
「今まで見てきた本がおいてえあったところと、その本があったところとでは造りが違っていてね。あまり開ける気になれなかったんだ」
確かに書物の模様もほかのものとは違う。この書物には丸い石が埋められていて明らかにほかのとは一緒にするなといったところがある。
「で、これはどうするつもりなのかな?優秀な静司君」
「いきなり何言ってんだか。これは元のところに起きたいんだけど、その場所にはもう行けそうにないんでそのまま持ってることにした」

不思議な書物だ。重さが感じられない。さて、これからどうするか。一通り話が終わると、またあたりは静かになった。泉に流れる水のお供、耳を凝らさなければ聞こえなかったのに、今では特に何もしないでも勝手に耳に入ってくる。

「そういえば、蒼にこの事を・・・」
「もちろん話して、小道具の材料を取ってきてもらった」
「僕は何日くらい寝ていた?」
「三日間ぐっすり寝てたよ。こっちは忙しかったのにさ」
随分と長い間寝てしまっていたようだ。そういえば、一週間ぐらいねていないんだっけ。それでつらいから家に帰ると寝るにも樹斗が出掛けるというから心配で・・・
「随分とためてたんじゃない?身体に悪いから毎日6時間は寝ないと、身がもたないよ。最近急激にやせたのもそのせいじゃない?」
「どうして寝てないって分かったんだ?」


「身体の疲労状態。いつも寝不足で玄関で倒れてたのは一体誰だと思ってるの?」

簡単に言ってのける静司に感謝の言葉を言うと紅はこの習慣を直さなければと思った。

「そろそろ朝だね。蒼が起きたら出掛かるから。荷物はもうできてるんだ。それと、紅」
「なだなにかあるの?・・・・これ」

手に渡されたのは予備のめがねだった。

「もしなくしたりとられたりしたときにはそれと、後もう一つ俺が持ってる。適当に使い分けてちょうだいな」
「わかった」

渡されためがねを胸のポケットにしまうと、背筋を伸ばして起き上がった。
ぐっすり寝ている蒼をチラッと見て、紅は静司に視線を置いた。
(また一つ借りを作ってしまった。どうしてこう、静司を頼ってしまうのだろうか。僕は本当に情けないな)
静司はというと、その頼りになることを生かしてセールスをしているようだ。大体のことができるから、助っ人として金で動いていると聞く。
特に力仕事に使われているらしいが、その使い方はあたっていると思う。静司は何かと頭の固い奴のように主我勝ちだが、どちらかというと体力があるのだ。家でおとなしくお仕事をするより、探検して新しいものを見つけて喜ぶようだ。行動力がある。
僕の場合は家でおとなしくしている方だろう。その製で小さいことから何かとタイプの違う僕たちは後から生まれた蒼を相手にして遊んでいた。僕はおとなしく本を読んだり、ファミコンをしたりあまり行動的ではないことをしていた。政治とはよく喧嘩相手になったり、モノコの里に探検しに言ったり、何かと行動していた。ただ、静司の後をついていくにはちょっと厳しいものがあって、並大抵の行動力では置いて行かれるのが落ちだ。蒼は静司についていくだけの体力があったらしく、おいていかれることはなかったらしい。


今でも何故か覚えている。昔の光景。悲惨だったのは小さいときから小学生にあがる前と中学に静司があがってきたとき。静司と長い間一緒に居たときだ。
初めて二人で対山のモノコの里に行ったのは僕が5歳、静司が4歳だった。いつも遊んでいたアサラ公園が一時改装のため使えなくなりその間の埋め合わせをモノコの里にしたときだ。モノコの里は山の上にあるので、長い石段を登らないといけない。僕もまだあのころは静司とよく遊んでいて、そのくらいのことならば追いついていけた。だが、あがった後が大変だった。静司は走り回ってそこら辺に生えている木の中に隠れたり、モノコの里を管理しているおじいさんの家の縁の下に入って出てこなくなって迷惑をかけたり、挙句には木に登ってそのまま寝てしまっていて、いつ落ちるかもしれないとハラハラしたのを覚えている。
結局僕は起こして連れて帰ろうと樹に登って静司をおこしたのはいいいけど自分が降りれなくなってしまって先に降りた静司にいわれたんだ。

「紅。さっさと降りてこないと先に帰っちゃうよ」

誰のためにこうなったんだ。と何回心の中でつぶやいたことか。結局自力で降りたのだけれど、静司はあきれたように言っていたっけ。

「一人でちゃんと降りられるじゃん」



その後喧嘩して、それでも暗いから手をつないではぐれないようにして家にかえったんだっけ。
今から考えても、4歳の子が言う言葉には思えない。それにかなり大きな樹で地上まで3メートルは夕に会った。まだ小さかった僕たちには身長の倍以上もあるあの樹を静司は簡単に降りたのだ。
そのあと小学校に上がったときには蒼も4歳で静司と遊べるようになり、僕とはあまり遊ばなくなった。そのことから僕は本に興味をもちはじめ、家に閉じこもることが多くなった。その間、静司は蒼を連れて外に遊びにいっていた。恐ろしかったのは中学二年のときで、静司が原因で三年の先輩に付けねらわれた時だ。
小学校のときはそんなに騒動を起こさなかった静司だが、中学に入ることになってからその容姿と器量が目立って三年生が中心に静司を襲い始めたらしい。そのころには静司は随分強くなっていて三年生は相手にならなかったらしい。うちの道場で休日になると仕事をするくらいだからそれもそうだろう。そこで、兄弟である僕が狙われ始めた。
はじめ三年生に呼ばれたとき、僕は静司が狙われていた事を知らなかった。いつも無傷で何事もなかったように帰ってくるのでそんなこと考えたこともなかった。だが、それを知って心配するということはなかった。心配する必要がなかった。

「実はお前の弟にはなしがあったんだがどうも聞いてくれそうにないんだよな。そこでちょっと思いついたんだがよ。兄弟であるあんたを捕まえておけば聞いてくれるんじゃないかとね」

いきなりこの人は何を言い出すんだろうとあの時僕は思った。だが、話の内容が分かりすぎてただそれを考えたくないから分からないふりをしていたのかもしれない。
いつの間にか人影が多くなっていて、逃げるにも道をふさがれて囲まれてしまっていた。自分の身体はあの時震えていたのだろうか、記憶にはない。

「聞いたぜ。あんためがねはずすとほとんど見えないんだって?」

そのとき僕は足がすくんで一歩も動けなかった。めがねをはずされるときも抵抗できなかった。ただめがねを外した男を見ていた。身体は動かなかったがやけに落ち着いて頭だけはものすごいスピードで動いていた。
そのうちめがねを外した男がいった。

「こいつ・・・すごい美人じゃねえか」

そういって無遠慮に髪をつかむとあごを持ち上げて上向かせた。
そういわれて他の男たちも紅の顔をしげしげとみる。

「・・・だな。こんな分厚いめがねなんかしてるから顔なんて見えなかったし」
「どうする?」
「やっちまおうぜ」

そういって拳を振り上げたところで誰かにその手をつかまれた。

「紅に手を出すなんて命知らずな奴らだな。死にたいのか?」

そういってとめたのは静司だった。紅の髪をつかんで離さない男が静司に向かっていう。

「本人がくるとはな。お前の大切な兄貴は俺たちの手の中だ。大人しくしててもらおうか」
「これはそっちの台詞だ。それ以上紅を刺激するんじゃねえよ」

そのやり取りをしている間に一人の男が紅を見て気づいた。

「こいつ・・・目が紅い・・・」
「遅かったか・・・」

そういわれたのを覚えている。めがねがはずされていたからその後どうなったのかは分からない。


気がついたら静司の声がして、保健室のベッドで寝ていた。いや、寝て痛んだと思う。
学校でベッドがあるのは保健室ぐらいだから。
どうやら気を失っていたみたいで、静司から聞いた話によるとめがねは壊れてしまったらしい。それに身体は自由に動かない市で、このまま授業をするのは危険だから静司が帰宅時間になったら迎えに来てくれるということだった。
保険の先生の江本、通称「えもっちゃん」がいうには、静司が僕を抱えてきたらしい。

「一体何があったんだ?あの静司が随分きれいなお姫様を抱えてきたと思ったら手を出すなよときたからな。兄弟仲がいいんだな。まぁ随分疲れているみたいだからゆっくり休んでいなさい。起き上がれないんだろ?」

確かにそのとおりだったのでこくりとうなずいて帰宅時間まで寝ていることにした。
いきなり力が抜けたようだった。身体に力が入らなくて声を出すのも億劫だった。一体どうしてだったのだろうか。
帰宅時間になるとすぐに静司が迎えにきた。まだ起き上がるまで回復していなかった僕を抱えるとえもっちゃんにお礼を言って部屋をでた。
その状況をみてえもっちゃんはちゃんと帰れるか?と心配したが、静司は笑って言っていた。

「心配しなくても大丈夫。家もそんなに遠くないし、弟が迎えに来るから」

帰り道、僕は気になっていたことを静司に話した。

「静司。あの後、お前があいつらを片付けたのか?」

上級生が何人も居たはずなのに静司は怪我一つしていなかった。なんといったものか思案しているようだった静司がいう。

「そうだとしたら?」
「そんなはずはない。いくらなんでもあれだけの人数だ。打ち身くらいするだろう」
「そうかな?」
「そうだ。静司が強いのはしってる。けど違うだろ」
「まあね。俺は止めに入っただけさ」

そういってアサラ公園に入りベンチに僕をおろして弟が来るのを待つ。どうやら静司も感じていたらしい。周囲に人の気配がする。きっと上級生が後をつけているのだろう。このまま家に帰る前に決着をつけるのだろう。

「僕はさっきのこと覚えてないんだ」
「そう」
「だから何をしたのか教えてくれないか」

神妙な顔をして静司に頼む紅に静司は微笑を返すだけだった。どうやら教えてくれる気はないらしい。かわりに紅の頭をぽんぽんと叩いて紅を抱き寄せた。

「知らなくていいから。一人でああいう奴に着いていくのはやめろよ」

静司なりの優しさらしい。そしてすごく心配させていたのだとこの時知った。

「ごめん」
「今更あやまるぐらいなら二度とするなよ」
「・・・ごめん」

そのまま静司に顔をうずめていると後ろから声がかかった。

「ずりーぞ静司兄」
「役得だろ」
「何言ってんだよ。さっさと離せよ」

どうやら弟の蒼が迎えにきたようだった。





「紅兄、樹斗も心配してる。早く帰るぞ。歩けるか?」
「大丈夫だ」

さすがに蒼にまでおぶられるのは勘弁してもらいたい。気力で立ち上がると振り返って静司にいう。

「後は任せて大丈夫か?」
「もちろん。その為にここにいるんだし。―――――紅に何かあったらあとでおしおきな」

後半は蒼に向かっていったのもだ。「えー」といいながらも頼りにされていると知っているので悪い気はしない。「じゃあ」といって帰途に着く。
蒼は背後で空気が変わったのを感じていたが静司を信じて、というよりは無事を確信していたので相手を気の毒に思いながらも何も言わずにそのまま紅とともに家に帰った。

「昼のときはやってくれたよな。おかげでひどい目にあったぜ。もうようしゃしねえぞ」

手にはナイフやら鉄パイプやら、どこから持ってきたんだか凶器が握られているらしかった。金属音が響く。

「元気だねえ。ちゃんと止めてあげたのに、恩をあだでかえすとは」
「うるせえ。やっちまえ!」

二十人ほどだろうか。それでも余裕たっぷりの静司に上級生が苛立つ。―――――昼の件で紅に手をだすことはないと思うが・・・
静司は思ったが上級生の態度からそれを改めた。きっとまた同じ事を繰り返すだろう。それならばと手加減なしで相手をすることにした。


その日帰ってきた静司は腕にかすり傷をしていたが何事もなかったかのように帰ってきた。「心配した?」といって僕に笑いかけるぐらいだから大丈夫だろうと思ったものだったが、気になる一言を残していた。「ごめんね?」
以降何故か静司ではなく僕が狙われるようになった。それに気になる視線もあった。さすがにそう何度もやられるわけにはいかないと初めのころは竹刀を持ち出した。
これでも道場の長男なのだ。剣道の腕ならば静司に引けをとらない。ただし日ごろの生活で体力はそんなにあるほうではなかったので長期戦にならないよう注意しながら凌いでいた。三ヶ月もすると相応に強くなってしまったようで、竹刀を持ち出すこともなくなった。
ある日静司がいったものだった。

「さすが。もう一人で相手できるようになったか。日頃から体力つけとけばよかったんだよな」
「静司。お前どういうつもりだ」
「なに。毎回俺が止めに入るのも面倒だろ。気を失わずにすむには紅が強くなればいいんだからさ」

とこれである。いつも感じていた視線はなんのことはない、静司だったのだ。いつも見守ってくれていたらしい。

「はめたな?」
「人聞きの悪い。俺はそれ相応に対処しただけさ」

しれっという。確かに体力不足だったが、随分と無茶をさせる。

「お前な・・・」
「――――それにもう、気を失うこともないだろうしさ」

こんなに脱力したのは後にも先にもないだろう。静司はどうやらこの一つの信念だけで僕に上級生の相手をさせていたらしい。ご丁寧に見物をしながらだ。あきれたことにそんな静司が本気だということもそれを許してしまっている自分がいるということも分かってしまった。

「―――――心配かけた・・・な」
「うん」

子供がいたずらを見つかったときのような笑顔だ。この時の静司の表情は忘れがたい。そんな昔のことに思いをはせていると



「紅?何をぼけっとしてるのさ。行くぞ。さっさと樹斗を連れ戻して帰るんだからな」

いきなり声をかけられてびっくりした紅だったが蒼ももうおきて荷物をまとめているのをみて、あわただしく自分に割り当てられたものを袋に詰める。この袋は書物が置いてあった場所にあったらしい。隠し場所は一つの実験室のようだった。
三人が準備を終えたのは樹斗が連れて行かれてから4日目の朝だった。

「さて、身体の調子も戻ったようだし、行こうか」
三人は神殿をでた。
向かう先は樹斗のいるビュオラ中心部から少し離れた暗い雲のかかるラドウ神殿だ。


    
   
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